なんでも確認しましょう。

       何気なく疑問に思うことや,当然と思い込んでいることなど,できるだけ実際に

      測定することで,『物理家』として恥をかかないように努めましょう。

 

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 コイルに流れる交流電流の位相角




  初めたのはもう10年以上前のことですが,課題研究でコイルの周波数特性を調べる実験をさせたことがあります。始めは

 「コイルに流れる電流は,電圧と位相が90度ずれる」ことを学習させることからスタートしたのですが,何人かの生徒が興味を持ち始め首を突っ込んでいったのでした。

 ちなみにこの「課題研究」は今多くの学校で取り入れているものではなく,「学校制定科目」でした。文科省がスタートさせる前なのですが,この名称を「使うな」と いう注文をつけられたりしました。


 

 コイルの周波数特性は左の回路で,信号源は低周波発信機にオーディオパワーアンプを用いたものでした。

 この実験の詳細は こちら を見てください。

 


 

  コンデンサーの場合と違い,コイルでは電圧と電流の位相ズレが90度にはなりません。高校物理の実験としてはこれをまともに取り上げるわけにはいきません。私が初めに取り組ませたのは,「コイルは導線をぐるぐる巻いているから抵抗がある」ということでした。大学の物理では,インピーダンスを複素数やベクトルとして扱うのが一般的ですが,高校では「してはいけないこと」のようです。しかし,生徒は実際に実験を始めるとそうするのが自然だと気がついてくれます。

 ところが,交流の周波数を変えていくとこれが単なる「抵抗」ではないことが明らかになります。コイルの中心部にあるいわゆる「鉄芯」の磁気損失などが原因です。

  


このデータは上の写真の中央列上のコイルのものです

 このような実験をしたことがある人は少ないようなので,データを紹介してみます。まず,始めは電源電圧を3.00ボルトに固定し,周波数を50ヘルツから500ヘルツまで変え,抵抗とコイルの両端の電圧を測定します。

 θ VLVRのなす角です。90度になってくれると良いのですが,色々なコイルで確認しても,左の表のように100度以上になります。

 R は150オームで,対してコイルのインダクタンスが小さいため電圧VLが小さいいものの周波数によって大きく変化していくのがわかります。コイルのリアクタンスは周波数に比例することからこれは当然のことです。



 ※ しかし,細かく見ると・・・




   VL の変化をグラフにしてみました。ほぼ直線のグラフになる様子がわかりますね。

   VLcosθ  がコイルの抵抗成分による電圧ですが,コイルの抵抗を直接測った値とは一致しないのが厄介な点です。

ちなみにその値は,

  VLcosθ/I = VLcosθ/ (Vr/r )  =  20.4 Ω

  コイルの抵抗は写真でわかるように,巻き数が少ないため  1 オームで以下です。
 コイルのインダクタンスを求めると,23mHでした。
 
 デジタルLCメーターで測定すると,24.8mHでした。

 ※ 実は,この計算には少し問題があります。測定器の
     データもそのまま信じてはいけません。
  
  理由は,後日 !!




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