なんでも確認しましょう。

      何気なく疑問に思うことや,当然と思い込んでいることなど,できるだけ実際に

      測定することで,『物理家』として恥をかかないように努めましょう。

 

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LEDの最小点灯電圧と波長について

緊急訂正!!     '12.03.21 

追加   '12.03.26

 LEDいろいろ

120315LED-1.jpg

 

    左の袋の中身はすぐ右にある透明の物で,自己点滅します。

    その他は,赤,黄,緑のものです。

 

  LEDはすごい勢いで勢力範囲を広げており,この言葉は小学生低学年でも知っているようです。しかし,進歩が早いためか,正しい知識がまるで知られていません。

・豆電球の懐中電灯では,中に入れる乾電池が1本,2本,4本,・・・  といろいろあり,電球を交換するとき注意が必要でした。

 ⇒ LED はありとあらゆるところで使われていますが,いったい

     何ボルト用なのか,誰も気にしないですね。

   と言うより,交換することも無いですし,気にする必要

     も無い使われ方がされています。  

 

 いわゆる「点灯電圧」 は,LEDが ダイオードであることから,

 「順方向電圧」 といわれ,発光色で異なります。

 

  赤色    ・・・ 約 1.8ボルト程度 

  黄,緑色   ・・・ 約 2.2ボルト程度

  青色     ・・・ 約 3.2ボルト程度 (白色はこの

                                           部類です) 

   などといわれ,少し以前まではほぼその通であり,

 私も信じこんでいました。

  大きな間違いをしでかしていました。 反省


 

DSCF7248.jpg


  Ne・・先生から指摘され,確認してみました。数年前に大阪のデジットで10本200円程度で購入したものだと思うのですが,
赤色は見事に乾電池一本で点灯しています。写真ではわかりにくいかもしれませんが,かなり明るく点灯しています。少し違うタイプのものですが,黄色と緑はまったく点灯していません。

 最低点灯電圧をチェックしてみたところ,1.35ボルト程度でかすかに光り始めました。1.4ボルトでは,完全に点灯しています。

 さて,なぜ乾電池一本で点灯するというようなことが起こっているか,理論的理解が必要ですね。大至急勉強します。

 eV=hνですから,Vで与えられるエネルギーより大きいエネルギーの光子が出てくることはあり得ないはずですよね。

 

DSCF7253.jpg

 

 

 これは4,5年前に科学の祭典で電子ルーレットの工作用に購入したものです。3mmの小型ですが,100個1000円だったと思います。こんなものまで,乾電池一本で光るものだったとは,思いもよりませんでした。

 

 信じ込むこと,思い込みが如何に怖いことか,痛感しました。

  では,理論的検証を  今まで,結構まことしやかに信じられていたもの

 

       LED.jpgWikipediaより

    

 ところが,今回 乾電池1本で明るく点灯するLEDの存在が判明しました。

 

 上の論理からすると,何か新しい技術の導入が図られ始めたということになりますが,普通に考えると 「昇圧回路」 を内蔵するしかありません。そういった物もすでに発売されていますが,豆電球型をしており,サイズが大きくなっているソケット内に昇圧回路を忍ばせています。

 

 ところが,そういうもの無しに1.5ボルト程度で点灯する物があるというのは,どうにも理解し難いものがあり,今回がんばっていろいろ調べてみました。

 

 

bandgap.jpg

 

 この図は結構よく見るものだと思います。波長計算に使われるバンドギャップ電圧Vはここでは,禁制帯幅と表現されています。

 赤のLEDは,この禁制帯幅があくまで,1.8〜2.0ボルト程度であることに間違いはありません。不純物半導体として,どのような「不純物」を使うかで決まってくるものです。

 LEDが発光するための電圧はふつう ダイオードの「順方向電圧」として表現されていますが,その最小値が 禁制帯幅であるというように「思い込む」 のが間違いの元でした。

 eV=hν のVはあくまで 禁制帯幅(バンドギャップ)です。

 

 では,最小点灯電圧はどこか,,,と言う疑問が出てきます。

Wikipedia によると,比較的簡単に疑問は解決できるようです。

 

 上の図で,基本的には(ごく単純には・・・)

 拡散電位 と 禁制帯幅 は同じものとして扱われますが,実際のダイオードでは,

 

 ダイオードを順方向バイアスで用いる場合は、ここから

 ・ 不純物準位等を介した遷移による電圧の低下分を差し引き

 ・ また電極でのショットキー障壁による電位差  や、

 ・ 素子各部での抵抗損失を           加えた

 電圧を与える必要があり、これを順方向電圧降下と呼ぶ。発光ダイオードでは発光波長や出力によって異なり、15V程度になる。

Wikipedia より

要は,LED点灯には順方向電圧を加え,拡散電位を下げるだけでよく,これは 禁制帯幅よりも小さい電圧のことがある,ということでした。

ですから,1.5ボルトで赤のLEDが点灯しても,不思議ではないのです。

以上,めでたし,めでたし です。

 

 で,この考え方で正しいのか,ご意見をください。

 

 

120315LED-2.jpg

 

 ここより下は,古いものです。

 

 これは,もう20年近く前からヤングの実験に使っている物です。

右端の 青色 は もう少し後になってから購入した物に付け替えましたが,明るすぎて使い難くなってしまいました。(中村さん,ありがとうございます)

 

 レーザーと違って,単色光ではないので,回折格子でこれらの光を見ると色づいてしまいました。初めのころは,3,4人のグループできちんと実験ができるということで重宝していました。

 

 このような使い方は,特に赤色LEDにとって3ボルトは電圧が高すぎるため,好ましくありません。最悪,「パチッ」といって切れてしまいます。電池はニッカドにしましょう。青色はマンガン乾電池でないと電圧不足になります。

 

 

その当時のレーザーポインタ

 

(残念ながら写真がありません)

 ちなみに,LEDでヤングの実験を始めたのは兵庫県では私が一番早かったであろうと自負していましたが,私より1年ばかり早くやっている人がいました。(確か新潟県の先生です)

 

 また,レーザーポインタを生徒実験に使えるようにしたのも,兵庫県では私が一番だったはずです。教材屋さんに頼んで1万円以下の商品をずいぶん探してもらっても見付からない時代に,1本 5000円以下のレーザーポインタを見つけ出し,皆さんにお知らせしていったものでした。それからしばらくして,教材カタログにも載せられるようになりました。(20年ほど前のことです)

 

 

 

120315TUR143.jpg

 もうひとつ,かなり昔に取り組んだのが,LEDでプランク定数を求める実験でした。いつごろのことか,はっきりした記憶もありませんし,記録も見付かりません。あまり,精度はよく無かったですし,理論的なつめがきちんとしていなかったので,どこにもお披露目していません。

 

 精度が出ない原因の一番はLEDのスペクトルがかなり広いことでした。左のグラフは当時使っていたLEDのものです。こんなにスペクトルが広がったもので実験をすること自体,ばかげているかもしれませんね。

 このLEDで半値幅は20nmちょっとといった感じですが,最近のものでも20nmを少し割る程度です。それと,グラフの上の方は,もっとピーキーですね。

 

 。

  上の計算では,中心波長を640nmとしましたが,この特性表では660nmですし,640nmでも0.2の強度があります。また,この式でも止まる点灯電圧は,

  700nmで  1.76 V

 660nmで  1.88 V

 640nmで  1.94 V

  620nmで  2.01 V

 となりますが,これでは説明できないLEDがたくさん出てきています。少し,理論的検証が必要になりました。さて,どこまで解析できるでしょうね。

  ※ ここの論理には間違いがあります。

 120315TLR143.jpg

  

   

 

  これは,一番初めに実験用に購入したものだと思います。もうメーカーのHPにもデータシートがありません。中心波長が700nmですから,濃い赤色で汚らしく,暗ーーーい物でした。

 

 しかし,昔の技術ではこの程度のものしかできなかったということですが,逆にこれだけ幅広いスペクトルに 「できる」 のですから,さらにもっと広げて白色光LEDが作れたりしないのでしょうか。

  最近話題になっている,家庭用LED電球は,100ボルト用と言うことになっていますが,直接100ボルトで点灯させているのではありません。もしそうであるなら,電球ひとつが数千円もしたりすることはありません。