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高校物理では,電流計や電圧計についてはその本質がほとんど説明されておらず,ひとつのメータでどのようにして3つの測定レンジを持たせているかだけを取り扱っています。
左の写真は少し見にくいでしょうが,白く円盤状に見える部分の中に大きな永久磁石が入っています。
中央部に 円柱型の鉄心があり,その周りに非常に細いエナメル線を巻いた可動コイルがあります。このコイルに針がついていて,電流で回転するようになっています。
このコイルに使われているエナメル線は非常に細く,長さも結構あります。そのため,「抵抗」を持つことになるわけで,それがよい場合もあれば困ったことになる場合もあります。
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実験に用いる電流計や電圧計は左の図のように複数の端子があり,用途に応じて切り替えて使うことができます。それぞれ内部にはどのような工夫がされているでしょうか。
教科書には,簡単に説明されていますが,実際には結構厄介や面も持ち合わせています。
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☆ 電流計の構造
左の写真の上図が基本形です。ここで
r はコイルの抵抗で「電流計の内部抵抗」と言います。理想的にはこの内部抵抗がゼロであって欲しいのですが,10Ω程度あります。 また,この基本構造の電流計ではmA程度の小さな電流しか測定できません(この測定最大値 i0を Full Scaleと言います) 。そのため,「バイパス」を設けて大きな電流を測定できるようにしています。ここで R を「分流器」といい,内部抵抗より小さな値にしてやります。
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Full Scaleを例えば10倍にしたいとき,バイパスR に元のFull Scaleの電流値の 9倍の電流を流してやれば良いので,左の計算で抵抗値を求めてやれば良いことになります。
私が以前使用していた高校の物理実験用の電流計では, i0 = 1.00 mA r=13.5 Ω でした。 ということは, Full Scale の電流値を5 Aにしたいとき,分流機の抵抗値はその1/4999にすれば良いのですが,0.0027Ωというとてつもなく小さな値にしなければならないのです。これがいかに小さい数値なのか,わかるでしょうか・・・
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実際は,50 mA , 500 mA , 5 Aと三つの端子があり,回路は左のようになっていました。R1 がどのような意味合いでつけられているかは,理由を考えてみてください。
残りの抵抗値を計算してみてください。
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このような「アナログ電流計」では,コイルに流れる電流による電磁力で針を動かし電流を測定していますが,必ず「内部抵抗」を持つため,電流を測定する回路に電流計を入れると,その内部抵抗により回路に流れる電流が「測定したい電流」とは違うものになってしまいます。
左の計算結果のように,大電流を測定する際には,内部抵抗はかなり小さいものになりその影響はほぼ無視できる状態になるのですが,小さな電流を測定する際にはその内部抵抗を無視できない状態になります。
特に低い電圧の回路で小さな電流を測定しなければならない時には,アナログ電流計は全く不向きであることが分かりますね。
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左の写真のデジタル電流計は近年非常に安価になり,マイクロアンペアレベルの測定も簡単にできるようになります。また,アナログではほぼ不可能な「五桁」の測定ができてしまうのです。ただ,リニアリティーはあまり期待できないようです。
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写真右端に見える「太い針金」は大電流測定用の「分流器」で,
シャント抵抗器と呼ばれるようになっています。これを少し抵抗値の大きいものに変えることで小電流の電流計に変えることも可能です。また,複数のシャント抵抗器を切り替えるようにすることで複数レンジの電流計とすることも可能です。ぜひ一度使ってみてください。
アナログ電流計はコイルに流れる電流を使って電流を測定しますが,デジタル電流計は「電位差」を基にするのが一般的なようです。抵抗器に流れる電流による電圧降下を測定し,電流値を求めます。また,コンデンサーに蓄えられる電荷 (電流??時間 )から求める場合もあります。
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